事故を起こした人や被害者は、黙っていると損保の担当者の言うがままに、ことが進んで、気がついたら示談書に判を押していたということになりがちだ。そこで、わからないことがあれば、とことん聞くべきだし、納得のいかない示談はすべきではない。そして世間相場がいくらなのかを知ることが、だまされないために最も大事なことなんだ。保険会社の担当者は、地味なスーツで、いかにもまじめそうな態度で被害者や遺族、契約者を口説きにやってくる。親切な応対や柔らかい物腰につい信用してしまうんだな。賠償交渉はいくら払わなきゃいけないという決まりはまったくない。相手がうんと言えば、それで交渉成立というわけだ。人身事故の担当者が、いまでも遺族に申し訳なかったと反省している事案がある。それは、小学校一年生(六歳)の子が事故で死亡したケースだった。自動車事故ではなかったため、被害者の遺族も、賠償額はいくらが妥当なのかわからなかったようだ。とりあえず、担当者は上司から言われたとおり、自動車保険の自賠責基準で話を進めたんだ。通常、自動車事故以外でも自賠責基準が一般的な賠償の基準として使用されている、と説明した。遺族もまだかなりショックを受けていて、ずっと落ち込んだままだった。まだ冷静に判断できる状況じゃなかったんだな……。そこに人身担当者が何度も来て話を聞いたり、仏壇をお参りしていっしょに涙を流したりしてくれるもんだから、すっかり信用してしまった。その結果、簡単に自賠責認定基準の三〇〇〇万円で示談してしまったんだ。任意保険の基準で計算しても、賠償金額は軽く七〇〇〇万円ぐらいにはなるはずだ。弁護士基準(赤本基準)で計算すると、なんと一億円は軽く超えてしまうんだぜ。さすがに担当者も良心というものがあるから、いまだに思い出すたび、後味が悪いとのことだ。損保の担当者はいかに少なく支払うかという、賠償交渉のプロなんだ。相手の無知につけ込み、少ない金額で、はんこさえ押させれば評価される。そんなやつらにだまされないようにしたほうがいいと思うぜ!